村上華岳MURAKAMI Kagaku1888-1939
聖蓮華
- 1937(昭和12)
紙本彩色、軸
114.2×31.8cm
昭和に入ってから画壇と一線を画すようになった村上華岳は、墨を用いて色彩を抑えた作品を多く描くようになりました。牡丹や六甲の山々を主題にするとともに、なによりも心血を注いだのが仏画でした。その制作でひたむきに追い求めた仏の姿は、釈迦や観音菩薩です。求道の釈迦は華岳自身を思わせ、また、観音像は優美で官能的なものでした。
本作品では、しなやかな衣と豪奢な飾り物を身にまとい、蓮一輪を手にした観音を描いており、祈りの対象としてだけでなく、女性としての妖艶な姿ややわらかな形を感じさせます。そこには仏画に描き求めてきた「久遠の女性」、理想の女性像の化身が宿っているのでしょう。