古くから自然界のあらゆるものに神が宿るとするアニミズム信仰に親しんできた日本。繁っては枯れ、再び芽吹く植物や壮大な山々の姿は、宗教的な思想とも結びつきながら美術の主要な画題となっていきます。また、洋の東西を問わず、神仏をあらわした仏画や聖母子像などの作品は、人々の信仰の対象となります。こうした画題には、戦争や災害といった社会状況を背景として、家族の安全や祖国の平和、復興への願いが重ねられることもありました。
本展では作品にあらわれた信仰や願いに焦点を当て、日本画を中心に、西洋美術や日本洋画、工芸を交えたコレクション約70点を紹介します。新しい一年に思いを馳せ、さまざまな祈願をする新春の時期、芸術家たちが作品にこめた祈りに目を向けてみてください。
会期:2027年1月9日(土)-3月28日(日)
[一部展示替えがあります]
前期:1/9-2/14 後期:2/16-3/28
展示構成
吉祥-器をかざる祈り
日常的に使用する陶磁器にあしらわれた華やかな文様の中には、幸福や長寿を意味する「吉祥文様」があります。中国の磁器《呉須赤絵鳳凰文盤》では、朱色を基調に、平和や幸福を示すとされる神獣・鳳凰を、不老長寿や富貴を意味する菊、牡丹が囲んでいます。日本においても吉祥文様は好まれ、藤本能道は《色絵紅白梅図陶筥》のうちで、蓋に紅白梅を、内側に松をあらわしました。器の文様にも「良いことが起こるように」と祈る人々の思いが感じられます。
17世紀
《色絵紅白梅図陶筥》
1979
その他の出品作品
《黄地青花花果文盤「大明正徳年製」銘》1506~21
河本五郎《色絵銀彩竜紋飾瓶》1976頃
神宿る自然
日本では「八百万の神々」といった言葉であらわされるように、万物に神が宿るとする思想が古くから親しまれました。山や川、太陽や風などの自然は神格化され、日常的な信仰を集めたほか、寺社仏閣を飾る画題にもなりました。神聖視された富士山の姿を堂々と描き出した横山大観、仏教伝来の道中の風景を「シルクロードシリーズ」として描き、戦後の平和への祈りをこめた平山郁夫、深遠な自然の景色や日の出の光景を寺社の障壁画として描く田渕俊夫。彼らが描く風景には、自然に畏敬の念を抱く人々や画家たち自身の思い、願いが重ねられています。
《不二霊峰》
1944頃
前期展示
《紫宮観望》
1976
後期展示
《明ける》
2020
その他の出品作品
小川芋銭《樹間如水人如魚》1923 前期展示
東山魁夷《雲立つ嶺》1976
山本丘人《聴春》1981
平川敏夫《春秋》1975 後期展示
鈴木五郎《新生》1966 初公開コレクション
神仏を象る
仏教や、日本神話、民間信仰で語られる仏や神々に姿形を与え、表現する神仏画。近代では、静謐な画風で仏画や牡丹を描き、自らの精神性ある画風を展開した村上華岳、心の中に浮かび上がるイメージのままに、釈迦の十人の弟子たちを木版画であらわした棟方志功の作品が挙げられます。それらの作品からは、画家自身の信仰心をも感じ取ることができます。また、葛飾応為《夜桜美人図》(後期展示)で画題となる和歌を詠む行為も、古くは言霊信仰に通じ、人々の願いが込められたものでした。日本に親しまれてきた信仰について、作品から見ていきます。
《夜桜美人図》
19世紀中頃
後期展示
《菩提樹下静観之図》
1935
前期展示
〈羅睺羅〉前期展示 〈普賢菩薩〉後期展示
1939
その他の出品作品
本阿弥光悦《宗達下絵色紙 早春和歌》江戸時代初期 前期展示
村上華岳《如意輪観音図》1935~37頃 後期展示
安田靫彦《わかき射手》1944 前期展示
前田青邨《金鳶》1940~48頃 後期展示
祝福の表象
西洋美術においては、キリスト教を中心に、教会や聖書の内容、聖母子像などの図像が画題として描かれました。宗教画を生涯で多く描いたルオーは、教会を飾るステンドグラスの表現を活かし、聖書の内容をあらわしています。また、キリスト教の宗教画が画中画として登場する島田章三《複製のある静物》や、聖母子像を思わせる母子をテーマとする伊藤廉ら日本洋画も展示し、西洋文化の影響を受けて描かれる祈りの姿を紹介します。
《聖書風景》
1943~46
《複製のある静物》
1967
その他の出品作品
フィンセント・ファン・ゴッホ《一日の終り(ミレーによる)》1889~90
アンドリュー・ワイエス《ケネットの集会所》1980
伊藤廉《母子》1930
ヘンリー・ムーア《母と子(直立)》1978
西洋絵画名作選
モネ、アンソール、マグリットなど、代表的な所蔵作品約15点を展示します。
《チャリング・クロス橋》
1899
※ 展示内容は変更になる場合がございます。ご了承ください。


