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絵画や彫刻などの美術作品の中には、漢字やひらがな、アルファベットといったさまざまな文字を見つけることができます。画中のモティーフとして登場する街角のポスターや書籍、コラージュされた印刷物、歌仙絵に記された歌、陶作品の文字模様など、作品の中の文字はテーマや舞台、モティーフの意味について、私たちの想像力をかきたてます。また、絵の片隅やカンヴァスの裏に書かれた画家の個性豊かなサインや数字、保管箱の箱書きは、作者や時代、伝来などの貴重な情報を伝え、その字には画家や所蔵者といった作品にかかわる人々の思いまで表れているかのようです。
本展では、絵画、彫刻、工芸など文字に焦点を当てて選んだ約70点に加えて、箱や軸などの付属品を交え、展示します。美術を取り巻くさまざまな文字から、コレクションを読み解きます。
会期:2025年7月8日(火)-9月23日(火・祝)
[一部展示替えがあります] 前期展示 7/8 - 8/17 後期展示 8/19 - 9/23
展示構成
文字もよう
陶芸作品の意匠には、巧みに文字を取り入れたものがあります。模様の中に紛れ込ませるように文字を記した作品や、表面にひとつの字を大胆にデザインした作品などが例として挙げられます。
松竹梅をモティーフとする《青花松竹梅文大壺「大明嘉靖年製」銘》では、模様として描かれたうねる木の枝によって「寿」などの字が形づくられました。近代の陶芸家・富本憲吉の《色絵陶板 自製自用煎茶器図》では、赤いお盆の上の茶器の表面に「憲吉愛用」という文字が記され、この器が陶芸家のお気に入りの品であったことがわかります。

1522~66

《色絵陶板 自製自用煎茶器図》
1946
絵の中の文字
風景画の中の看板やポスター、室内画の書籍というように、絵の中のモティーフにはさまざまな文字を見つけることができます。
島田章三《博物館》では印刷物がコラージュされました。切り取り、貼り付けられた文字からは主題である博物館の陳列品の情報や書籍の題名がわかり、展覧会のテーマまで想像できます。背景の看板に大きなアルファベットが書かれた国吉康雄《道化(舞踏会へ)》、雑誌や楽譜が組み合わされ、貼られた島田鮎子《散歩道》では、作品全体の一要素として文字を取り入れ、絵を構成したことがうかがえます。
画中の文字から作品の世界を読み解き、紹介します。

《道化(舞踏会へ)》
1950

《博物館》
1981
書と画の交流
優雅にあるいは力強く文字を表現する日本の書は、国内外で美術作品と関わってきました。
日本の書に影響を受けた画家のひとりであるスペインの画家ミロは、《女と鳥》において墨汁を垂らしたかのような表現を用いました。伊勢物語の一場面を描いた俵屋宗達《伊勢物語・墨田川図》(後期展示)では、物語中で詠まれる歌が優美な書で添えられています。
このほか、短冊に筆を走らせまさに歌を詠もうとする女性の姿を捉えた葛飾応為《夜桜美人図》(前期展示)や、源氏物語のモティーフが散りばめられた《源氏蒔絵文台・硯箱》など、歌や物語に関連する作品を展示します。

《夜桜美人図》
19世紀中頃
前期展示

《女と鳥》
1972

19世紀
初公開コレクション

《伊勢物語・墨田川図》
17世紀
後期展示
芸術家たちの記した文字
絵の片隅やカンヴァスの裏、作品を入れる保管箱には、画家のサインや制作年、タイトルなど、作品にかかわる貴重な情報が書かれていることがあります。
文人画のような作風で描かれた岸田劉生《童女洋装》には書が付され、題名や作者名とともに本作を描いた場所や年代、季節まで知ることができます。文筆家でもあった彫刻家・高村光太郎は自身の作品に詩をつけることがあり、木彫《鯰》には作品を包む帛紗に短歌が記されました。
額裏の記述や保管箱などの付属品につづられる芸術家たちの文字とともに、作品をお楽しみいただきます。

《童女洋装》
1926

《鯰》
1931
追悼展示 「今井龍満 Ryuma IMAI」

《Dragon (blue)》
2024
「偶然を生きるものたち」をテーマに動物を描いた今井龍満。精力的に活動を展開する中、2025年2月に48歳の若さで急逝しました。
当館で2023年夏に開催した個展は、今井にとってはじめての本格的な個展で、ゆれる線と鮮明な色彩による表情豊かな動物たちが、多くの人々を魅了しました。
このたび、当館所蔵品から今井が描いた動物たち約15点と個展の際に彼が選んだ西洋絵画3点を展示し、画家・今井龍満を偲びます。
※ 展示内容は変更になる場合がございます。ご了承ください。