中学校から始まる美術の授業では、「表現(つくる)」と「鑑賞(見る)」を互いに関連させて学ぶことが大切にされています。自分ではない他の誰かの作品を知ることで表現の幅が広がり、自らつくることでその工夫や作品の魅力に気づくことができる。この「つくる」と「見る」の関係を美術館での鑑賞に取り入れれば、中学校に通う生徒たちも、なにかを描いたり、つくったりすることから遠ざかっている大人たちも、作品を身近に感じ、その表現の魅力に自然と目を向けることができるのではないでしょうか。
そこで本展では、絵画を中心に「つくるの視点」で作品を紐解くことを試みます。題材や構図、配色といった、制作過程で向き合う要素を切り口に、メナード美術館の所蔵作品から約70点をご紹介いたします。
「つくるの視点」でみてみよう!
展示室では、各部屋一つのポイントに注目し、作品を紹介していきます
構図: 広がりのある風景を
描こうとした作者は、
横長の画面を選びました。
つくり方(発想): 色ぬりの方法は
絵の具だけではありません。ここでは、
カンヴァスに紙などを貼り付ける
コラージュの技法が用いられています。
描かれているもの
(モティーフ):
故郷、横須賀の灯台が描かれています。
色: 茶や赤を中心にまとめ、
落ち着いた印象でどこか懐かしい感じです。
島田章三 《灯台の在り方》1993
展示構成
なにを描く?どう描く?
絵を描くはじまりに、多くの人が浮かべるこの問い。
花瓶やテーブルクロスといった静物をモティーフに、絵の中の空間を追求したブラック。愛する人を、性格まで伝わるような緻密な描写でとらえたピカソ。さらには、誰もが知る物語と改めて向き合い、彫刻家ならではのアプローチでイメージを作り出した舟越桂。身近なものから特別なものまで、作家たちの作品に「なにをどのように表すことができるのか」を探ります。
《青いテーブルクロス》
1938
《オルガ・ピカソの像》
1918
《ピノッキオ》
2009
*会期中、図版替えをします
構図の効果
なにを描くかを決めたら、次はモティーフをどう配置するかを考えます。
画面いっぱいに大きくとらえるか、全体像とするか。縦か、横か。モティーフをどのように配置するかで印象は大きく変わります。
道の奥へと誘われるような印象のノルデの作品は、一点に向かって線を集中させ奥行をつくり出す透視図法が用いられています。簡潔な色と形で構成された熊谷守一の作品には、実は巧みな配置のなかに画家の鋭い観察眼が隠れています。画家がなにを見て、なにを表そうとしたのかを、構図を手がかりに掘り下げます。
《森の小道》
1909
《日本海》
1976
《小菊》
1956
色のいろいろ
空は青、色をぬるのは 輪郭 線の内側。画家たちは、このような固定観念にとらわれず色彩を探求しました。
クロスの 点描 画に用いられた葉っぱの薄紫や肌の上の緑色は、目の中で混ざりあい、にごりなく鮮やかに作品を輝かせます。レジェの作品においては、赤や青、黄や緑の色の帯がひとつのモティーフとして表され、躍動感をつくりだします。理論や経験に基づき生み出されたいろいろな色を体感します。
《木陰のある浜辺》
1902
《4人の自転車のり》
1945
《花束》
1918
「自由な発想」のつくり方
中学生が美術を難しいと思う理由に、その自由さがあると言います。確かにゼロから発想するのは難しいものがあるでしょう。しかし、多様な表現を知り、引き出しを増やせば、それらを選んだり組み合わせたりをして「自由な発想」をつくりだすことができるかもしれません。
カルダーが展開した幾何学的な図形の組み合わせによる世界、アンソールの特異な想像力によってつくりだされた情景、今井龍満による偶然性を活かした線と豊かな色彩で描かれた動物たちの姿など、ここでは作品に表された世界、用いられた技法や材料といった観点から、作品の魅力を紐解き、「自由な発想」のつくり方として紹介します。
《青と赤の上に黒い円盤と黄と渦巻き》
1960
《仮面の中の自画像》
1899
《3Deer》
2023
※ 展示内容は変更になる場合がございます。ご了承ください。


