速水御舟HAYAMI Gyoshu1894-1935
芙蓉
- 1934(昭和 9)
紙本墨彩、軸
46.5×61.2cm
23歳の若さで日本美術院同人となった速水御舟は、まもなく徹底した写実主義による細密描写を日本画に取り入れました。さらに幻想性漂う世界を示した《炎舞》(山種美術館 1925)や宗達・光琳の日本的な装飾性とキュビスムとを消化した《名樹散椿》(山種美術館 1929)などの傑作を生み出し、40歳で急逝するまで絶えず意欲的な創作活動を展開します。
確かな空間構成に冴えた線描、墨の柔らかな階調と花のみに施された紅の彩色との呼応が美しいこの芙蓉図。ここには、1930(昭和5)年の渡欧を契機にいっそう深めていた東洋美術への傾斜がみて取れます。