東山魁夷HIGASHIYAMA Kaii1908-1999
雲立つ嶺
- 1976(昭和51)
紙本彩色
54.0×73.0cm
港町・神戸で育った東山魁夷が、山に魅せられるようになったのは東京美術学校在学中のこと。写生旅行で出会った山々がつくりだす雄大な自然は、以後、彼の風景世界として幾度となく描き出されました。この東山芸術の到達点ともいえるのが、1975(昭和50)年、67歳の時に奉納した唐招提寺御影堂障壁画(奈良県)です。
その翌年描かれたのが、この《雲立つ嶺》です。青系の濃淡のみで描かれた陰影の美しい深山は、御影堂上段の間を飾る《山雲》の水墨画を思わせます。針葉樹が鬱蒼と繁る嶺から雲が湧き立つさまは、日本の山間によくみられる情景ですが、魁夷ならではの霊気漂う神秘的な風景につくりあげられました。