ポール・セザンヌPaul CÉZANNE1839-1906
麦藁帽子をかぶった子供
- 1896~1902頃
油彩、カンヴァス
80.8×54.8cm
明るい陽光のなか、座る一人の子供。その素朴な風貌から、ポスト(後期)印象派の画家セザンヌの故郷、南仏プロヴァンスに住む農民の子供ではないかと思われます。
子供のボリュームのある胴体と、顔と帽子の卵形による組み合わせが画面に安定感をもたらす一方で、水彩のような淡い色合いや、顔や服装部分にのぞくカンヴァスの白地が光の存在を感じさせ、画面に軽やかさを与えています。また、本作を描き進めた画家の様子が、鉛筆の線跡からうかがえます。
西洋美術の伝統的な約束事にしばられず、色彩とボリュームからなる独自の秩序をもつ絵画を探求しつづけたセザンヌ。40歳代には、画面全体を規則的な筆致で再構成するようになりました。さらに後年には、カンヴァスのぬり残しで光を表したり、薄い色面を重ねた画面構成を行うようになります。ここでも、腕の影には薄い色が重ねられ、背景にはやや四角い色面の重なりが見られます。セザンヌのこうした新しい技法は、後にピカソやブラックがキュビスムを生む重要な要素となりました。