佐伯祐三SAEKI Yuzo1898-1928
街角の広告
- 1927(昭和 2)
油彩、カンヴァス
72.1×60.0cm
東京美術学校を卒業した佐伯祐三は、1924(大正13)年に妻子とともにパリへと足を踏み入れます。一度の帰国を挟み1928(昭和3)年にパリで客死するまでのほんのわずかな期間に、モンパルナス周辺の裏通りの情景を憑かれたように描きました。この界隈を日々歩き回るなかで佐伯の眼が捉えたのは、新聞やポスター、カフェや広告塔など、都市生活の日常で眼に留まるさりげない事物にあふれたパリの姿でした。
どんよりとした曇り空になじむ褐色の古い壁に、広告ポスターが無造作に貼られた街角。目の覚める色鮮やかなポスターは、通りすがりの人々の一瞥を受けながら、壁に溶け込むように朽ちていったことでしょう。ポスターにリズミカルに乱舞する鋭い文字が、都市特有の刹那的な空気からこぼれでる詩情を掬い取っているようです。