岸田劉生KISHIDA Ryusei1891-1929
林檎を持てる麗子
- 1919(大正 8)
水彩、紙
38.2×28.3cm
いかにも童女らしい、ふっくらとした顔立ちの少女。彼女の頬の赤み、つややかな髪の輝き、色とりどりの毛糸で編まれた肩掛けの質感などが、水彩の柔らかな質感で見事に描き出されています。
モデルとなったのは、岸田劉生の娘、麗子です。少しふくれっつらにも見える表情が、幼女のあどけなさをよく伝えています。満5歳に満たない女の子には、ポーズをとってモデルになるのは退屈だったのでしょうか。あるいは父のいつもとは異なる鋭いまなざしに、緊張の面持ちだったのかもしれません。
自画像をはじめ身近な人の肖像を多く描いた劉生の画業のなかでも、麗子はもっとも重要な主題でした。劉生が没した麗子16歳の年までに、油彩画、水彩画、素描、日本画など多種にわたる「麗子像」が制作されています。