舟越桂FUNAKOSHI Katsura1951-2024
長い休止符
- 1993(平成5)
木、彩色・大理石/鉄
人物・影 70.0×230.0×h.188.5cm
バイオリン 31.0×70.0cm
第43回ヴェネツィア・ビエンナーレ(1988年)への出品をはじめ、1980年代後半より国内外において高く評価されている彫刻家、舟越桂。
日本を代表する具象彫刻家である父・舟越保武のもとで、自然に彫刻家を志した舟越桂は、東京藝術大学大学院在学中に、素材となる楠とめぐり合い、本格的に木彫に取り組むようになりました。それ以降、楠に色を塗り、大理石の目をはめ込んだ着衣の半身像を多く制作してきました。この作品は数少ない全身像のひとつです。
ステージ衣装を身につけ、演奏するポーズをとる男性。その手にヴァイオリンは無く、足元に伸びた影とともに冷たい鉄となりその存在を表しています。あたかも時間と空間が凍りついたかのような静寂のなか、流麗な指の動き、少し傾いたポーズが、タイトルの「長い休止符」の詩的な響きとともに想像力を掻き立てます。
モデルは音楽家としての苦悩や逡巡を抱える舟越の長年の友人です。ここには実在の人物の内面に迫りつつ、彫刻家としての自らの心情が重ね合わせられているのかもしれません。