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特別企画展
吉田善彦・林功-受け継がれる日本画の美-
2011年4月26日(火)-6月19日(日)
東京藝術大学教授であった吉田善彦(1912-2001)、そのもとで学んだ林功(1946-2000)。二人の日本画家に共通したものは古典絵画を模写し学び得た精神性や技を自身の創作に活かしたことです。
1929(昭和4)年、吉田は「絵は心」と説いた速水御舟に師事します。古典から学ぶ尊さを知るその教えから、古画模写を積極的に行いました。法隆寺金堂壁画の模写事業に参加するなど先人の傑作にふれる経験により、もみ紙と金箔が作る「吉田様式」と呼ばれたやわらかな光を放つ日本画を生み出しました。
1969(昭和44)年、大学院に進んだ林は、吉田の指導する保存修復専攻で学び「模写は絵のもつ感動を写すこと」との教えから古典芸術の素晴らしさを再認識します。創作活動を展開しつつ模写を通して古画研究の第一人者となった林は《伝源頼朝像》(京都・神護寺蔵)など名品の模写を行う中で中世の絵絹復元に取り組み、その後は復元した絹を活用し爽やかな空気に満ちた日本画を描きました。
吉田と林が相次いで世を去ってから10年を迎えますが、二人の作品には古から受け継がれてきた伝統を学び、湧き上がる感動を伝える大切さが、今も鮮やかに示されています。この展覧会では吉田と林の代表作あわせて約45点をご紹介します。清らかな美にあふれるその画業をどうぞご覧ください。
当館所蔵の代表作品を紹介する コレクション ・コーナー
「速水御舟」 所蔵の11点を特別展示
大正時代、日本画壇に彗星のごとく現れ、40歳という短い生涯で世を去った速水御舟。天才と称されながらも画壇での地位に安住せず、常に挑戦を続ける姿勢を貫きました。次々と作風を変える革新的な作品は当時の画壇を驚かせ、その後も多くの画家に影響を与えました。
御舟は「日本画は心をもってものをみなければならない」と吉田に伝えています。描くことは、対象を写し取る技術だけでなく、いかに自分なりに認識するか、という大切さを教えています。日本画の心構えを諭した御舟の想いは、生涯、吉田のよりどころとなり、吉田の指導を受けた林にも御舟の精神が受け継がれました。