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ロシアに生まれ、主にフランスで活躍したシャガール(1887-1985)は、97年の長い生涯のなかで色彩豊かな夢幻的世界を数多く生みだしました。なかでも、版をつくり色を重ねて制作する版画作品には並々ならぬ情熱を注ぎ、版画について「私の哀しみのすべて、喜びのすべてをその中におさめることができる」と語っています。
エッチング、木版画、リトグラフなどの技法で版画作品を制作したシャガールですが、とりわけカラー・リトグラフにおいては20世紀最大の版画家といっても過言ではありません。それはリトグラフが色彩画家としての彼の才能を最も鮮やかに発揮できるところだったからでしょう。
本展では、所蔵する4つのカラー・リトグラフ集より94枚を展示します。また、情熱的な愛の物語として知られるオペラ「カルメン」に題材を得たリトグラフ《カルメン》をコレクションより初公開します。
色を重ね、色を紡ぎだすことで生まれるリトグラフの世界。そこには版画ならではの色の重なりや風合いが感じられ独特の表現が広がります。リトグラフという媒体を通し、鮮やかに彩られたシャガールの幻想世界をどうぞお楽しみください。
主な展示作品
《アラビアン・ナイト(『アラビアン・ナイト』からの4つの物語)》より〈カマル・アル・ザマンと宝石商の妻〉
1948刊 全12枚展示
シャガール初のカラー・リトグラフ集!
《ダフニスとクロエ》より〈クリアリステーから着物を着せられ髪を結ってもらうクロエ〉
1961刊 全42枚展示
1枚に20~25色もの色版を使い4年かけて完成!
《神々の大地で》より〈アリストファネス〉
1967刊 全10枚展示
70歳を越したシャガールが描くギリシア神話の愛の世界!
《サーカス》より〈空中ブランコと曲芸〉
1967刊 全38枚のうち30枚展示
シャガールらしいモティーフが幻想的に舞う円熟期の傑作!
メナード美術館 初公開コレクション
マルク・シャガール
《カルメン》
制作年:1967
形質:リトグラフ サイズ:102.5×66.4cm
1966年、ニューヨークのメトロポリタン・オペラハウスの壁画を依頼されたシャガール。その下絵の一部をもとに刷り師ソルリエによって作られたリトグラフの第2ステート*にシャガール自身が手を加え200部限定のリトグラフが制作されました。それが本作です。
シャガールはこの加筆作業に数カ月を費やして彩色し、右上には2人の人物を左下には鳥を加えました。
ビビットな赤い背景に表された情熱的な世界で、カルメンの色とりどりのスカートや男性2人に付けられた緑色が画面を華やかに彩り、白い鳥が彼らの織りなす物語世界へと誘います。鮮烈で力強い印象があり、画家の熟達したリトグラフの技量がうかがえる一点です。
✽ ステート:版画を制作する過程における刷りの段階のこと。最初の段階の刷りは1st state(第1ステート)という。