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人の顔や姿には豊かな個性があふれています。
この展覧会は「ひと」に焦点をあてながら、所蔵する絵画や彫刻などの作品約70点を3つのテーマに分けてご紹介するものです。
魅力的に表されたさまざまな「ひと」をどうぞお楽しみください。
※一部展示替えがあります 前期展示:3/21〜4/22 後期展示:4/24〜6/24
展示構成
全期間展示 前期展示:3/21〜4/22 後期展示:4/24〜6/24
人物画は絵画の主要なテーマの一つであり、古くは人の姿を借りた神々が完璧なプロポーションやたぐいまれなる美しさを持つ人物像として描かれました。近現代においても人物画は画家たちを魅了するテーマです。彼らは人物をリアルに表すだけではなく、人体の形に大胆なデフォルメを加えるなど、自由な表現を試みています。
人間を描くという画家にとって根源的な動機が、絵画に新たな造形を生み出し続けているのです。
有元利夫
《二本の木の間》 初公開コレクション
制作年:1978
形質:画布・板、ミクストメディア
サイズ:18.5×15.6cm
《近ずいた朝》 初公開コレクション
制作年:1979
形質:画布・板、ミクストメディア
サイズ:65.5×53.4cm
1985(昭和60)年、38歳の若さでこの世を去った有元利夫。具象絵画の登竜門であった安井賞を受賞するなど、将来を期待された画家でした。その作品は、古い絵画をみるような風化した肌合いの画面に、青空や白い雲、散る花びらなどが描かれた詩情あふれるものでした。
有元作品には画家自身が「女神」とよぶ人物が登場します。そのかたちは「ものの本質をつかむ一方法は誇張」であるとした、画家が生み出した究極の人のかたちといえるでしょう。女神は有元が「舞台」や「幕」とよぶモティーフとともに描かれ、みるものを幻想的な世界へと誘います。舞台上の女神は、有元にとっての真実を表す象徴的な存在でした。
舟越桂
《青い頭巾》
初公開コレクション
制作年:2017
形質:メゾチント・ドライポイント・アクアチント
サイズ:49.0×35.5cm
木彫人物像で国内外に評価の高い舟越桂。彫刻の制作のほか、1987年より数年に一度のペースで版画を制作しています。
本作では版画技法がいくつか組み合わされています。そのうち、深い黒を生み出すメゾチントの技法は、銅板を削ったり擦ったりすることから、「自分の彫刻の仕事により近いと思わせる版画技法」だと舟越はいいます。また、アクアチントの技法では鮮やかな頭巾の青が表現されました。漆黒の画面に鮮やかさが加わり、深遠なるまなざしをもつ人物が闇のなかから印象的に浮かび上がります。
身近な人々
人の顔は感情や人格を表す重要な箇所であり、美術においてさまざまに表現されてきました。様式化された理想美としての顔や、対象の個性を豊かに表した顔、画家の感情が投影された顔もあるでしょう。また、自画像は画家が自己を深くみつめることで生まれてくるものです。ここでは、身近な人々を題材に画家や彫刻家が表した顔をご覧ください。
- ピエール・ボナール《青いジレを着たブロンドの女》
1922
- ポール・セザンヌ《麦藁帽子をかぶった子供》
1896~1902頃
- 岸田劉生《笑ふ麗子》1922
- 尾形光琳《三十六歌仙図》18世紀
- 菊池契月《聖徳太子》1935~45頃
「三十六歌仙」は、奈良時代から平安時代中期に活躍した和歌の名手36人のこと。すぐれた歌人は「歌仙」と称され、後の時代の人々の崇拝の対象となりました。三十六歌仙の歌はすぐれた書家の手により後世に伝えられ、その姿はやがて絵画化されるようになり、「歌仙絵」として知られています。
ここでは、当館のコレクションより初公開となる《藤原興風像(佐竹本三十六歌仙切)》をはじめ、三十六歌仙にちなんだ作品をご紹介します。
古今東西を問わず多くの画家たちが、古の人々の姿に関心を寄せ、さらには信仰の気持ちを神仏の姿に託して描きました。近代の日本では、日本や中国の故事や歴史、神話などの文学に登場する人物を題材とした作品があり、それらは「歴史画」と称されました。とくに日本画では、明治から昭和戦前期にかけ歴史画の流行をみることができます。画家たちは、伝統や歴史に関するさまざまな人間像を表していったのです。
重要文化財
《藤原興風像(佐竹本三十六歌仙切)》
初公開コレクション
制作年:13世紀(鎌倉時代)
形質:紙本彩色、墨書 サイズ:35.8×59.8cm
前期展示:3/21〜4/22
本作は、もとは上下二巻から成る巻物で、秋田の藩主佐竹家に伝来したことから「佐竹本」と呼ばれています。
「三十六歌仙」の肖像に、その略伝と秀歌一首を添えたものでしたが、1919(大正8)年に一歌仙ずつに分割されました。数ある「三十六歌仙絵」のなかでも「佐竹本」は現存する最古のものです。
本作には平安時代の歌人である藤原興風が描かれました。老境に入り、「誰を親しい友とすればよいのだろうか」と詠んだ歌が添えられています。長寿はめでたいことですが、それゆえの孤独感もあったのでしょうか。昔に思いを馳せるように遠くを見る後ろ姿が印象的です。
※ 展示内容は変更になる場合がございます。ご了承ください。