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日本画家・田渕俊夫(1941-)は、「感動」する心を制作の原点に、植物や風景画を中心とした作品を発表しています。それらは、画家が目にした一瞬の時が印象的に描かれており、さらには悠久の時を感じさせる壮大さをもつ作品となっています。
メナード美術館では開館30周年を記念し、「田渕俊夫 -時をきざむ 心にきざむ-」を開催いたします。
当館の田渕作品は、愛知県立芸術大学に画家が赴任して以来、その画業に着目し収集してきたものです。これまで「田渕俊夫展」を3回開催してまいりましたが、今回はコレクションのみで展覧会を構成する初の試みとなっています。
所蔵する全43点すべてを出品し、過去、現在、そして未来へと続くであろう田渕俊夫の画業をご覧いただきます。
特別出品!
2017年5月、法相宗大本山薬師寺食堂(奈良)に
田渕が奉納した壁画(写生と下図)をお借りしてご紹介致します。
仏教伝来をテーマとして制作されたその壁画は全長50mに及びます。
制作に向け画家が思い描いた世界を写生と下図よりご覧ください。
田渕俊夫 略歴
- 1941東京に生まれる
- 1967東京藝術大学大学院修了
- 1968再興第53回院展に初入選
- 1970愛知県立芸術大学に赴任
- 1985東京藝術大学助教授となる 日本美術院同人となる
- 1990美術館での初の個展をメナード美術館で開催
- 2002永平寺に襖絵を奉納('04鶴岡八幡宮 '08智積院)
- 2005東京藝術大学副学長となる
- 2017薬師寺に壁画を奉納
- 現在日本美術院理事長 東京藝術大学名誉教授
展示構成
身近な風景ー日本
田渕が日本の自然や風景を本格的に描くようになったのは、1970年、愛知県立芸術大学助手として東京から愛知に移ってから。身近にある植物の成長に永遠に続く生命のつながりを感じ、身近な風景のなかにはその地に秘められた古の歴史を見出したのです。
- 《緑影》1972
紙本彩色 170.0×215.0cm
旅に生まれるー海外
東京藝術大学教官として世界各地を訪れる機会が多かった田渕は、旅の風景を作品に残しています。それらは仕事合間の一瞬でとらえた風景であったり、幾度かの旅の記憶が長い時を経て重ねられた風景であったりします。田渕の風景画には、異国で感じた広大な時間や空間のイメージが刻まれています。
- 《大地》1994
紙本彩色 91.2×73.2cm
屏風に描く
画面を折りたたむ独特の形を持つ屏風に描くことは、画家にとって制作への挑戦でもあります。田渕は入念につくり込んだ下図を映像にして屏風の画面に投影し、直接描いてゆくという革新的な手法を用いました。この技は屏風だけではなく、智積院襖絵といった大画面の制作にも生かされました。
- 《夕想》2006
紙本墨画、四曲一隻屏風 171.3×364.8㎝
メナード美術館 初公開コレクション
《緑の詩》
制作年:1973
形質:紙本彩色 サイズ:175.8×220.0cm
「最も日本的な風景を描きたい」と、富士すそ野に広がる青木ヶ原を取材した作品で高い評価を得た田渕俊夫。そのうちの一点である本作は再興第58回院展に出品されました。色数を抑えた画面のなかで、日本画の緑である「緑青」が鮮やかに目に映ります。
青木ヶ原では春とともに緑があふれ、同時に朽ちた樹々は土に還り新たな生命の糧となります。時の流れのなかで繰り返される生命の営みをみつめ続けている田渕芸術の原点ともなった風景です。
《刻(一の酉)》
制作年:1995
形質:紙本彩色 サイズ:117.1×91.5cm
江戸時代から日本に続く行事である酉の市は、11月の酉の日に日本武尊をまつる神社を中心に立つ市です。11月は年により2~3回の酉の日があり、順に一の酉、二の酉、三の酉とよばれます。
本作では開運招福、商売繁盛を願う名物の縁起熊手が並ぶ活気に溢れた光景が広がります。露店に所狭しと並べられた熊手は墨線で細かく描き出され、鯛の飾りの赤が印象的です。繰り返される形と色が画面に小気味良いリズムを生み出している作品です。
※ 展示内容は変更になる場合がございます。ご了承ください。